平成14年度 調査研究部の研究の概要
1.研究主題  
   「自分のしたいことを見つけられていますか?」  
     〜年間165日の休日を持つ安房の子どもたちの実態からの考察〜

2.研究主題について
 昨年度の調査研究で、安房の子どもたちは学校5日制に対して、小学6年生の24%、中学2年生の35%の子どもが、 「学校5日制になると休日にすることがなくてつまらないのではないか。」と回答している。同時期の県教委の調査と比べると、安房の子どもの割合は高く、特に中学校では3倍近い。
 学校5日制が完全実施された今年度はどうであるか。子ども・保護者・教師の休日の実態を明らかにするとともに、学校5日制に不安を持っていた子どもがどのように感じて休日を過ごしているのかを調査してみることにした。さらに、子ども・保護者・教師の願いについても調査してみることにした。
 我々調査研究部は、「目的やしたいことを持って休日の設計が自分でできる子どもを増やしていきたい」と願っている。そこで、「目的やしたいこと」が見つからず、充実した休日を過ごしていない子どもがどのくらい存在しているか、何が子どもの「したいことを見つけるきっかけとなるかを明確にしていきたいと考え、本主題を設定した。
  

3.研究のねらい
 子ども・保護者・教師のそれぞれの休日の過ごし方を調査することにより、子どもたちが「したいこと」を持ち、年間165日の休日をより有意義に過ごせるようにするための手だてを明らかにする。

4.調査の視点
 ○学校5日制における子どもの休日の過ごし方を調査し、その傾向を探る。
 ○どんな傾向の子どもたちが、「したいこと」、「打ち込んでいること」、「夢」を持っているか、また、そのきっかけが何であるかを探る。
 ○保護者の休日の過ごし方とよりよい休日を子どもが過ごすための関わり方を探る。
 ○教師の休日の過ごし方と、よりよい休日を子どもが過ごすための働きかけを探る。

5.調査分析方法 
 (1)調査対象・回収数(抽出数)安房地方の児童・生徒、教師、保護者を対象に調査する。
  ・小学校6年生   396名(200名)
  ・中学校2年生   341名(200名)
  ・教     師    430名(100名)
  ・保  護  者   737名(100名)
 (2)調査内容
  @児童生徒に対して
   ○休日の過ごし方と充実度
   ○打ち込んでいることを見つけたきっかけ
   ○保護者や学校への要望
  A保護者に対して
   ○5日制の是非
   ○休日の子どもの生活の変化
   ○学校や地域への要望
   ○子どもへのかかわり方の現実と理想
  B教師に対して
   ○子どもに望む休日のあり方
   ○保護者や地域への要望
   ○学校がすすめていくこと
 (3)調査方法・調査期間
  ・質問紙調査(平成14年9月〜10月) 

6.調査の要約
 (1)安房の子どもたちの休日
  *4人に1人は休日が充実していないと感じている。
  *休日の過ごし方は休養・遊び・部活動が多い。(中学生の4人に3人は部活動)
  *休日が充実している人は意欲的である。
  *充実している子どもは打ち込んでいることや夢であり、きっかけは友達や家の人からが多い。
  *目的意識のある子どもは多くの体験をし、また、より多くの体験から「したいこと」が見つかるという相乗効果が期待できる。
  *大人に対して、自由に遊べる場所を増やしてと願っている。
  *打ち込んでいることや夢のある子どもは、主体的で規範意識が高く、友達も多い傾向がある。
 (2)保護者から見た子どもたちの休日
  *学校5日制には約2割が肯定的、約4割が否定的である。
  *休日の増加で、子どもたちはテレビゲームをする時間が増えたと捉えている。
  *子どもたちには、身体の鍛錬・学習・家の手伝いをと考えている。
  *子どもが充実した休日を過ごすために、地域には趣味・興味に関することを、学校には部活動・クラブ・自然体験を望んでいる。
  *保護者は子どもと何らかの関わりを持つべきだと考えているが、実際は子どもの自主性に任せている。
(3)教師が考える子どもの休日
  *教師の休日は、部活動や仕事を家に持ち込むなど多忙である。
  *休日の過ごし方の思いは、子ども・保護者・教師で異なっている。
  *子どもには、「家族で過ごす」、「友人と過ごす」、「体験的学習」を願っている。
  *地域には文化・伝統的な活動、自然体験的な活動、奉仕的活動・ボランティア活動など、地域に根ざした活動を期待している。
  *教師も子どもと同様、学校施設の開放を望んでいる。
  *子どもには様々な体験をしてほしいと願っている。 
 
7.まとめと提言
(1)まとめ
   今年度の調査でも、休日が充実していないと回答した子どもが、小学6年生15%、中学2年生32%いた。充実した休日を過ごしている子どもとそうでない子どもとは一体どこが違うのか、調査結果から次のような傾向が伺える。
 @休日が充実している子どもほど、体験が豊で外に出てより多くの体験にチャレンジしていこうとする意欲的な考えを持っている。
 A「夢や打ち込むこと」を持っている子は、休日も充実した過ごし方をしている。
 B「夢や打ち込むこと」を持っている子は、次のことができる。
   ・自分のことは自分でする。
   ・小さい子どもを背負ったり、遊んだりしたことがある。
   ・貝や魚、木の実などをとったことなどの自然体験がある。
   ・家の手伝いをする。
   ・自分から進んで係活動や清掃活動をする。
   ・友達が悪いことをしたらやめさせることがある。
 C充実している子・打ち込んでいる子・夢のある子は、より多くの友達と遊ぶ。
 (2)提言
 @子どもたちへ
  ○家の中から出て、いろいろなことをやってみよう。
  ○たくさんの友達と遊ぼう。
   〔そのために〕
   *公民館や博物館などのいろいろな催し物に参加してみよう。
 A保護者の方へ
  ○子どもとたくさん話しましょう。
  ○自分の子どもをそっと見守りましょう。
   〔そのために〕
   *子どもと共通の趣味や遊びを持ちましょう。
 B先生方へ
  ○思いやりの心や規範意識を育てていきましょう。
  ○公民館や博物館などからのパンフレットやチラシに「一言宣伝」をつけましょう。
   〔そのために〕
   *縦割り集団の良さ意図的につくろう。
   *自分の住む地域の行事や活動に参加しよう。
   *パンフレットやチラシをしっかりと読もう。 
 
8.今後の課題
 ○保護者は学力保障に関する関心度が高い。懇談会や面談で説明をして理解を図り、また学習参観を継続的に行うなど啓蒙活動を盛んにして、学校と家庭との信頼関係を強めていく必要がある。
 ○休日の過ごし方に対する認識や思いは、子ども・保護者・教師がそれぞれ異なっている。これからの休日、その過ごし方の内容や質が問われることになるであろう。
 ○子どもたちの願いは、学校施設の開放や自由に遊べる場所の確保、スポーツや文化活動、自然体験や社会体験を行える魅力的な地域活動の充実である。その声に応えるべく、地域社会は実現に向け努力していく必要がある。場合によっては行政を主導とした社会教育体制の模索も必要であろう。
 ○中学生は、「休日が充実している」「充実していない」双方の理由のトップに「部活動」を挙げている。より多くの中学生が楽しみや充実感をもてるような環境整備と、部活動を離れた時の選択肢の充実が今後必要である。