平成18年度      平成17年度お薦めの本はこちら

安房教育研究所の所員が、日頃の読書の中から特に心に残った本を紹介しています。
興味をもたれた方は、ためしに読んでみてはいかがでしょうか。

書名 著者
出版社
一言
幻獣ムベンベを追え 高野 秀行

出版社
集英社文庫
1986年,当時早稲田大学探検部に所属していた高野秀行さんがミーティングの中で「アフリカのコンゴ人民共和国のテレ湖にムベンベという怪獣がいる。それを探しに行こう。」の言葉が探検のに始まりである。大人になっても冒険心を持ち,メンバーと共にスポンサー探しやコンゴへの入国方法など様々な問題を解決して探検を行う。現地での探索は,コンゴ人民共和国の文化の違いやマラリアでの高熱など・・・容易なものではなかった。24時間態勢で湖を監視したり,ニシキヘビやゴリラを食べたり,30日あまりのムベンベ捜索は難を極めるものであった。実際にムベンベは発見できたのか・・・?教育書など専門誌を読むことが多いなか,気分転換に読んだ本です。とても面白く,時間が経つのを忘れてしまい一気に読むことができました。
宇宙授業
中川人司

出版社
サンクチュアリ出版
宇宙のことが大変わかりやすく書かれている本である。長年宇宙に関わる仕事をしてきた著者が、まるで自分の庭の様子を紹介するように宇宙について語ってくれる。手書き風の見出しや柔らかなタッチで描かれたイラストが優しく語りかける雰囲気を作り出しており、子どもから大人まで楽しめる本である。また、気楽に読んでいくうちに宇宙についての知識が自然と身に付き、さらに読み進めていくと宇宙の壮大さに気づき、自分が大変小さな存在に思えてくる。何気なく見上げた夜空が、まさに宇宙そのものである、そこに宇宙があるという感覚、宇宙をのぞいているという感覚がわいてくる。そして少し心がわくわくしてくるのである。私もこのような授業ができたらと思い、やる気がでる本でもあった。
診察室にきた赤ずきん
〜物語療法の世界〜
大平健

出版社
新潮文庫
精神科医である作者は,患者の疲れた心を癒すために昔話や童話を語る。悩みを抱えた心の深層を「赤ずきん」「三ねんねたろう」「ぐるんぱのようちえん」などで解き明かす。患者の気持ちを診て,愚者に「自分」の気持ちを見させるときに,昔話や童話が威力を発揮するそうだ。患者の一番自分らしい体の部分である顔を映し出す鏡のように,自分ならではの気持ちのキーポイントを映し出してくれるという。人は誰にでも「自分の物語」があると書かれている。物語によって人が癒される,お伽話が人を救う,子ども時代に感銘を受けた童話やこれから出会うお話が人生と絶妙に符合しその人の人生を導くなどということにも,心が奪われる本である。
考えないヒト
ケータイ依存で退化した日本人

正高信男

出版社
中公新書
現代社会では,携帯電話は生活に必要不可欠なアイテムとして広く社会に普及している。携帯電話の登場は,我々の生活を便利にした。しかし,その一方で,日本人の生活スタイルやコミュニケーションのとり方を大きく変化させることにもなった。生活がIT化され,視覚情報に極端に依存し,言語による情報処理に依存しない思考判断傾向を持つ日本人をふやすこととなった。こうした状況を,筆者は「退化」と表現し危惧している。こうした人間が「キレ」やすい人間として位置づけることができるからである。携帯電話を持つ中高生が増えている。も津古と自体は悪いことはないが,使い方についてはよく考える必要があると思う。
努力は裏切らない
作者
宇津木妙子

出版社
幻冬社
元全日本女子ソフトボールチーム監督の宇津木妙子さんが,シドニーオリンピックで銀メダルを獲得したチームの奇跡をふり返った一冊である。チーム作りの中でおきた様々な困難をどのように乗り切ってきたのか。監督としてどのように選手達と接してきたのかがつづってある。「勝ち運は信じる者へ」「」監督は選手以上に努力する」「人間には持ち場があるる」「叱ってくれる人を待っている」などの言葉をはじめとする内容は,指導者としてとても共感し,学ぶべきものが多い内容である。
ケータイを持ったサル
   「人間らしさ」の崩壊
作者
正高信男 


出版社
中公新書
コンビニエンスストアの店先や電車の床にじかに尻をついて座っていたり、電車内でお化粧をしていたり…。最近の若者の行動は、我々の想像を超えていてびっくりしてしまうことがある。
そうした若者の行動を、サルの行動を研究している筆者が分析して書いたものが本書である。ルーズソックスや靴のかかとを踏みつぶす「べた靴」現象、「ひきこもり」、そして現代人の「ケ一夕イ」でのやりとり等について、サルの行動の研究結果をもとにした視点から説得力をもって述べられていて、思わず「なるほど!」と納得してしまう内容である。「ひきこもり」などの周囲とのコミュニケーションがうまくとれない若者と「ケータイ」でいつも他人とつながりたがる若者。一見、両者は正反対に見えるが、じつは成熟した大人になることを拒否する点で共通していると筆者は述べている。そしてこれは「子ども中心主義」の中で育った結果ではないかと結論づけている。本書の前書きの中に『「近ごろの若者」は、決して彼らだけで「嘆かわしい」存在になったわけではない。上の世代が「そう」育てたから「そう」発達したのだ。』といった記述があった。
教育に携わる者としての責任を考えさせられる言葉であった。
落ちこぼれてエベレスト
作者
野口健

出版社
集英社文庫
七大陸最高峰最年少記録を達成した野口健さんは、エベレストや富士山の清掃活動など環境問題にも取り組み、マスコミでも取り上げられている。野口健さんの現在に至るまでの道のりは、最初から「登山家」としての道を歩んでいるのではない。幼少時は、ハーフということでいじめられている。小学校高学年になると今度はいじめ返し、中学校時代は勉強ができずに落ちこぼれになっていた。高校時代の停学中に植村直己さんの「青春を山に賭けて」に出会い、人生が大きく変わった。山登りに夢中になっていった。植村さんの登山を目標に世界中の山に挑戦をし、シェルパとの仲間関係や登山が死と隣り合わせであったり、自然界の厳しさや、高山病との戦いや挫折などが語られている。エベレストに散乱するゴミを拾うことで、各国の自然に対する考え方も見える。「日本の経済は一流。しかし、文化、マナーは三流」の言葉は考えさせられるものがあった。また、本校ではこの本を用いて道徳授業を実践している職員いる。VTRなども活用し、子ども達は「理想の実現」に向けて目標に向かって努力することの大切さを学ぶことができた。“
世界を見る目が変わる50の事実
ジェシカ・ウイリアムズ(著)
酒井泰介(訳)

出版社
草思社
肥満の3人に1人は発展途上国にいる、先進国の国民は年間7キロの食品添加物を食べるなど、具体的な数字を示しながら、50の様々な事柄を簡潔に説明している本である。50の事柄の中には、取るに足らない内容もあるのだが、世界にはいまも2700万人の奴隷がいる、と読んだとき、私は驚いた。この本に取り上げられている50の事柄は、昨日や今日起こったことではない。そのため、ニュースとして取り上げられることはほとんどないのだろう。私にとって、初めて知ったことが多かった。著者は、イギリスBBCのジャーナリストである。また、取り上げられている内容は、イギリスから見た事実や超大国アメリカの例が多い。しかし、日本の例やアジア・アフリカ諸国の苦しい現実の話題も豊富である。著者は、丁知ることが世界を変えることになる」と考え、多くの人に「50の事実」を知らせようとしている。この本には、たくさんの数字が登場し、数字を使って脚色した感は否めない。また、全てを鵜呑みにすることは危険である。しかし、知らなかった世界の問題を知ることにより、「自分に近いところ」'に置き換えて考える良いきっかけになる本であった。興味を持った事柄について今後深く調べてみたいと考えた。
ことばと心をひらく「語り」の授業
寺井正憲 
青木伸生編著

出版社
東洋出版社
本書は、国語学習におけ「語り」の可能性や有効性について書かれている。子どもたちが語る場に立つこと(語りを語り、他の語りを聞く。)によって、質の高い話すこと、聞くこと、書くこと、読むことの学習を経験する。そこでは、音声的な技能学習のみならず、語り手と聞き手の心が通じ合い、通じ合うコミュニケーションを体験することができる。このコミュニケーション教育を国語の授業を通して考えさせられる一冊である。小学校、中学校における語りの授業実践についても、授業の流れや授業作りの工夫、必要な学習材も具体的に紹介されている。また、語りのワークも紹介され、そこにはコミュニケーション学習の様々なエッセンスが凝縮されている。
CHANCE(チャンス)
作者
犬飼ターボ

出版社
飛鳥新社
「人は誰でも成功者として生まれている。ただ、そのことに気づいていないだけだ」という言葉の意味に深く考えさせられる本です。なぜ、自分は今までうまくいかなかったのか? どうずれば成功者の仲間入りができるか? 主人公が数々の試練を乗り越えながら、多くのことを学び取っていく感動のシーンがたくさんあります。この本は、成功を収めた著者が実体験をもとに描く元気が出るサクセスストーリーです。
空への手紙 
雲のむこうにいるあなたへ

佐藤律子編

出版社
ポプラ社
8月のある日、真っ青な空にぽっかり1つ大きな,真っ白な雲が浮かんでいた。子どもの頃にどこかで寝転びながら見た懐かしくホッとするような大きな雲だった。「そういえば……」と、何年か前に購入した本書を本棚から手にとった。
「空の上のお友だちにもたくさん見にこれるように、屋根に天窓をつけます。あなたからもらった、目に見えるもの、見えないもの、いっぱいいっぱい大切にしていきますね。」本書は、亡くなってしまったかけがえのない人々に対してWebサイトの伝言板に寄せられたメッセージを1冊の本にしたものである。読むたびに切なく、胸が痛む思いがする。しかし故人を思う人々の優しさがストレートに伝わってくる。6年生の授業の教材として使用した時には、心を打たれ涙を流す子どももいた。私にとって“いのち"を考えさせられる1冊である。
ことばをはぐくみ中学生が輝く
作者
田島伸夫

出版社
新日本出版社
この本は、中学校教員が国語教育を通して生徒に学力をつけることはもとより、作文指導や読み、表現の指導を通して積極的な生徒指導を行い、生徒を育てた実践が書かれている。私は国語の教師ではないが、生徒の作文を読むと生徒の考え方や、人間性がわかり、また、文章を書かせることで、生徒の考え方が整理されたり、成長したりすることを実感している。普段の実践に役立てていきたいことが書かれている本であった。また、初任の頃、指導教員の先生に『教育とは言語活動である。』と教えていただいたことを思い出し、学校教育の中で国語指導の重要性を再認識した本であった。