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たくましく未来を開く安房の子どもの育成
ー意欲を持ち,自分で決めてやり通す子どもを育てるにはー

平成18年11月22日 午後1時30分から安房教育会館にて教育座談会を開きました。
テーマは「たくましく未来を開く安房の子どもの育成」−意欲を持ち,自分で決めてやり通す子どもを育てるには−

パネリスト

川名稔 鴨川市立大山小学校 校長
石井陸雄 鴨川市立主基小学校 教頭
嶋田裕史 鴨川青年の家 社会教育主事
鈴木ひとみ 「おらが房州に民話の花さかせべえ」実行委員長
森田典子 南房総市立北三原小学校教諭 教育研修部副主事

抜粋
@ 問題提起
(安房研究所 調査研究部副主事 石崎)

 今年度の調査研究部と教育研修部の研究主題に関連して問題提起をする。
 現在の教育課題として、いじめの問題がある。いじめは、他人の身体や精神に危害を加えること。いじめが深刻化し、自殺者が出るなど、許されるべきことではない。
 他人には危害を加えないけれど依然として続いている問題として、不登校がある。不登校の中には、ささいなことを気にするあまり、登校できなくなる子どももいる。人の心の痛みがわかり、たくましい心を持った子どもを育てることが必要になる。
 また、IEAやPISAの調査結果から、現在の日本の子どもは“判断力や表現力が十分身についていない・学習意欲は高くない・学習習慣が身についていないなどの課題が挙げられた。
 千葉県学力状況調査でも同様に、千葉県の子どもは、家庭での学習時間が少なく学習意欲に課題がある・物事を筋道立てて考える思考力に課題がある・学んだことを他の教科や生活の中に活かそうとする意識が少ないなどの課題があげられた。学習に意欲を持ち、あきらめずに問題解決にあたる子どもを育てることが必要である。

 これらのことより、昨年度、調査研究部では研究主題を「意欲のある子どもを育てるために」とし安房の子どもの実態を調査し・研究してきた。
 その結果、行事や課外活動の場面では子どもの意欲は高いものの、学習の場面では他の場面よりも低いことがわかった。
 本年度も研究を継続し、安房の子どもの学習意欲に絞って、実態を調査し、学習意欲を高める指導に役立つよう研究を進めている。

 教育研修部では、安房の子どもの現状をふまえて、研究主題を「自ら課題をつかみ、見通しを持って学ぶ子どもの育成」とし、授業研究を中心として研究を進めている。

 それぞれの立場のパネリストの方々に、現在の安房の子どもがどのように写り、実態をどのように捉えているか、また、我々の今年度の研究である「学習意欲を高める指導」「見通しを持って学ぶ子の育成」のための方策についてご意見をいただき、研究の充実を図りたいと思う。さらには、たくましく未来を開く安房の子どもを育成するためにはどのようにしたらよいか、ご示唆をいただきたい。
A 柱1  目の前の安房の子どもを見て思うこと(安房の子どもの実態)
       
 学習・生活の様子 , 人間関係, 変わってきている点 等
川名
安房のへそと言われる大山小に勤務している。一口に安房と言っても、海岸部、住宅部、山間部では子どもの実態は違う。
安房の子は、純朴な子が多く、変に大人びていなく、すれていない。教師の話もよく聞く。現代的な課題である、例えば携帯電話による犯罪やコンビニ前でのべた座りなどは少なく、地域の教育力がまだ健在であることを物語っている。
しかし、自然の豊かなところにいる割には自然の中で遊ばなくなった。競争心、向上心はやや低い傾向にある。
少子化と関係して、自分に自信がもてない子がいる。子どもたちは過保護に扱われ、たくましさに欠ける。      
石井 
プラス面として ものおじしない。表現の豊かさがある。絵やイラストは上手。学習に対しては熱心である。
マイナス面として 忍耐力が足りない。たくましさの欠如。昔は群れをなして自分達でどんどん事を進められたが、この頃はお膳立てされた中で行っている。野性的な面がなくなった。
嶋田
鴨川青年の家と大房少年自然の家の勤務が長い。社会教育施設を利用している子どもの様子から話したい。
挨拶は「こんちは」がここ2・3年増えた。
開講式等でも、寝そべって聞く子がいる。それらは、特別な子ではなく、ごく普通の子。
今まででは考えられないようなことも起こる。何があっても対応できるような心の準備が必要。
森田
持ち物が無くなっても平気な子が増えた。
他者意識が減っている。
ゲーム性の高いものは好むが、思考力を要するものはめんどうだと回避する傾向がある。
問題意識が低く、「別に」「まあ」等の発言で済ませる。
自分が困ることが今は少なくなっている。黙っていれば、誰かがやってくれる。
また、情報が多すぎて、わからなくなっていることも感じる。
鈴木
5人の子がいるが、それぞれ違いがある。
子ども語り部教室に通ってくる子は、非常に聞く力もあるし、語りも上手で、やる気がある。
子ども歌舞伎教室に来た子は、厳しい指導にもついていく意欲が高い。
一番心配なのは、「めんどうくさい」と言って、なんにもやろうとしない子。家でテレビゲームなどをしているだけ。
そういう子の心をどう広げたらいいのか。
B 柱2  こんな安房の子どもを育てたい(目指す子ども像)
         
意欲,課題を把握する力,やり通す力, たくましさ 等
森田
教え子の中に、素直に感情を出す子がいるので、自分はその子を授業の良し悪しのバロメーターにしている。
子どもをついつい勉強ができるできないで二分していないか。
通知票の行動の評価にあたることを、子どもたちの前でわかるように伝えていくと、子どもの気持ちをふくらめることができる。
失敗をおそれないで、行動できる子、助けを求められる子、間違えたらやり直せる子 にしたい。
嶋田
社会教育施設の役割は、普段できない体験や新しい出会いを通して、知恵を身につけ夢をふくらませることだと思う。
夢中になれるものを見つけるきっかけ作りができたらといつも考えている。
体験の中で、子どもをほめて欲しい。
鴨川青年の家の目玉はカッターである。チームワークの心地よさと、自然の怖さを体験できる。
子どもは、前に比べると体力が不足しているようである。
野外炊事は、外で食べる楽しさと便利でないことの楽しさがある。
社会教育施設で、さまざまな体験を多くしてほしい。
川名
学校では、学校教育目標にどんな子どもに育てたいかをうたっている。
房州人はあばら骨が一本足りないと言われる。
温暖な気候で、あまり努力をしなくても生活していけるところからそういわれる。
欠点でもあるが良さでもある。やさしくて、思いやりのある房州の良さを引き継いで欲しい。
よく働く子を育てたい。
他人に対する心配りのできる子、世界に羽ばたける子にしたい。
石井
豊かな自然とおおらかさや温かさといわれる豊かな人間性が安房にある。
自然のやさしさ、温かさ、厳しさを体験を通して知り、多くのことを身につけている子になって欲しい。
農作業を通して、地域の方たちとつながり、協力ができるようになっている。
鈴木
小学生から高校生までがメンバーの英語活動のキャンプで、キャンプファイヤーの燃え残りの炎を囲み、高校生や中学生などのリーダーが小さな子をどう活動に取り込むか、真剣に話し合っていた。このキャンプは、大人は影からサポートするだけで、全ての企画運営を高校生のリーダーを中心に行っている。子どもは育つ。
自分の田んぼで、小学5年生たちと田植えをしたことがあるが、仕事を取り合うくらい楽しそうにやっている。山での活動では、子どもは多くの遊びを自分達で見つけ楽しく過ごすことができる。
C 柱3  意欲を持ち,自分で決めてやり通す子どもを育てるための方策
        
意欲,やり通す力,未来を開く力 等
森田
感動や共感を共にしてやることが、有効であると考える。
日常的な働きかけで、意欲が出てくる。
授業の中でも、関連させ、つなげていく。
まず課題を把握させる。「わかりました」と同じように言ったとしても、個々の理解度は違う。そこを見取っていくことが大切。
見通しのもてない子もいる。
個別支援計画を持ちたい。
最後まで追求できる子にするには、適切な時間と量でなければいけない。
自力解決の時間を大切にしたい。失敗をさせることをおそれない。それにより伸びることも多い。
評価も支援の一部。なかなかできない子は、教師が一緒にゴールまでの見通しをつけてやれるように支援したい。
鈴木
子どもは、伸びる。先週もじもじしていた子が、今週は先にたってやろうとすることもある。
年の違いがあると、年長の子が年少の子に働きかけ、結局年長の子が成長する。
子ども会等の活動は、非常に良い。いろいろなかかわりも体験もできる。
しかし、どんなに働きかけてもダメな子がいる。ぼくはいいよ。と意欲をもてない子はどうしたらよいか。
石井
限られた時間の中で教育はなされている。
P-D-C-Aのサイクルでたっぷり振り返りたいが、現場はゆとりがなくなり、P-D-P-Dの繰り返しになりがちである。行事を精選したり時期をずらしたりの工夫が必要。
指導法の改善が有効であり、少人数指導だと子どもたちの意欲も持続する。
問題は一斉授業だが、それもちょっとした工夫で改善できる。
計画はゆとりを持って、一斉授業の工夫と個に応じた指導の工夫が大切。
川名
今の子は手をかけすぎている。
冷静に考えると、子どもは実は昔と比べそんなに大きくはかわらないのではないか。
大人やお年寄りの知恵で子どもを育てて行きたい。
異年齢集団のかかわりは、多くの知恵が身につく。
手の届くような身近な目標にすると、子どもは取り組み方がわかる。
親の教育への参加も、学校を通してお願いしていく。
失敗させることも大事。
植物も種類によって水の適正量は違う。子どもも同じ。
D 質疑