夏季宿泊研修会 教育講演会
平成19年 8月
演題 『豊かな人間性を育む指導を充実させるには』
講師 教育臨床研究機構 理事長 中野良顯先生
1 はじめに
人間関係づくりにおいて有効であるとされる活動として、グループエンカウンターがある。体験を通して理解し、交流を図ることにより、内面的な変化を生みだすことを期待している。これは、『教えない教育』のスタイルである。しかし、最近、『教える教育』が重視されるようになってきている。人間関係づくりを進めるにあたり、教えながら考えさせる授業を構造化したものが、ピアサポートである。
2 千葉県におけるピアサポート
2007年3月、小学校1年生から中学校3年生まで9年間の体系的指導プログラムが完成した。自分を大切にし、そして周りの人を大切にするという2つの能力を学ぶことができる。各校に配布された資料を活用することで、誰が指導しても同じ内容を同じように指導することができるよう作られている。年間4回で充分であるかという意見もあるようだが、資料はあくまでモデルである。各校において独自にさらなる開発をし、実践してほしい。各学年で学ぶ能力は、小学校1・2年生「コミニケーションの基礎」、3・4年生「感情」、5年生「問題解決」、6年生「自己主張」、中学校1年生「クリティカル・シンキング」、2年生「セルフ・マネジメント」、3年生「意志決定」である。
3 地域や家庭と共に
実際に授業を行った教師から、地域や家庭の協力が必要であるのではないかという意見があった。これについて説明したい。
プログラムの主成分は、授業と一般化・維持・促進手続きである。資料にチャレンジプリントというものがある。これは、学んだことを促進させるために役立つ。チャレンジプリントを家庭で取り組むようにすることにより、学校で学習したことを保護者にも知られることができる。つまり、保護者の目にプリントを触れさせるチャンスをつくることになる。この他に、ピアピア新聞の発行がある。各セッションの後から次のセッションの間に取り組むことにより、学んだ内容を維持することができる。次のセッションまでに学習したことを忘れてしまわないようメンテナンスをすることに役立つ。ピアサポートを保護者に体験してもらう方法もあるので、ぜひ行ってほしい。
4 実生活にいかすために
授業で学んだことを忘れないようにし、広がりをもたせるため、活用した資料を常時掲示しておくことがよい。そうすれば、いつでも振り返ることができるし、思い出す手がかりとすることもできる。また、学校生活の様々な場面で教師が意図的に問いかけることで、日常化を図ることができる。学習したことを繰り返し活用する場を設定してほしい。
5 子どもや教師の願いに応えて
プログラムを作成するにあたって、県下全域の教育ニーズを調査した。地域は異なるのにニーズは共通しているという結果がでた。例をあげると、子どもたち自身が学校で身につける必要があると思っている能力は、1位「良いこと悪いことを区別する能力」、2位「周囲と仲よくつきあう力」、3位「たくましく生きる健康。体力」、4位「自己主張する力」となっている。ピアサポートのプログラムは、この調査結果と、進路指導調査から必要なホームルームの内容「自分の個性・適正」「人生設計」「学ぶことの意義や目的」「社会人に必要なモラル・マナー」などを考慮し、作成されている。したがって、このプログラムをきちんと教えることが大切である。
6 前の学年の内容に戻って取り組む
今年度から導入されたということで、小学校1年生以外、積み重ねがないままにその学年の内容を学習することになる。前の学年の内容にも触れたいという意見があった。このような場合の扱い方について説明する。
各学年4つのセクションで構成されていることは先に述べた。実は、第2セクションと3セクションに重要な内容がでてくる。ここを実践すると、ねらいの本質的なものに触れ扱うことができる。ただし、小学校5年生と中学校1年生の内容はこの2つのセクションだけで取り組むことは難しいので、承知しておいてほしい。2学年下のまで戻って取り組むとよいだろう。 45分間で終わらせるためには、事前に台本を予習し、内容を熟知しておくことが必要である。特に、ゴシック体の台詞は、きちんと教えてほしい内容である。省略せずに扱ってほしい。