教育研修部

思考力を高める学習指導のあり方

〜筋道を立てて考える子どもの育成〜

1.主題について

 みんなが豊かで便利な生活をするようになった現在、物事に執着しない・物事を深く考えない子どもが多くなったように思う。学力テスト等で、選択肢から選ぶことはできるが、記述式の問題に対しての無回答の割合が多い。経済協力開発機構が実施した国際学習到達度調査では、応用力に弱点があることが明らかになった。
 安房の子どもの現状を話し合う中で、答えは出せても、その理由を筋道立てて説明できないという実態が浮き彫りになってきた。
 新しい学習指導要領改訂のポイントの一つに思考力・判断力・表現力などの育成が示されている。そこで、安房の子どもたちの実態を考慮し、これからの教育に求められている「思考力」に着目して研究を進めていく。
 本年度は「思考力を高める学習指導のあり方」を研究主題とした。研修部として、まず、「思考力」および「めざす子ども像」をはっきりさせる。思考力を高めるためには、問題に対しておよその答えを予想したり、根拠を明らかにしながら一歩ずつ進めていったりするといった「筋道を立てて考える力」を育てることが大切であろう。
 そのために、昨年度までの研究の成果である問題解決的な学習過程を活用し、それぞれの場面でめざす子どもの姿の実現に向けた手立てを探り、その有効性について授業実践を通して明らかにしていきたい。

6.課題
5.成果

  【小学校】 平成20年11月10日(月)
 第5学年 算数「面積」  授業者 安田骭

 既習の長方形や正方形の面積の求め方を活用して平行四辺形や三角形の面積の求め方を考え、公式にまとめていく学習である。検証授業は単元の後半で、三角形や四角形の面積の学習を応用しL字型の面積を二等分する発展的な内容である。筋道を立てて考える力を高めるための手立てとしては、「問いを生かした授業展開」を取り入れた。課題に出会ったときの問いを大切にし、問いを出し合う中で課題に対する見通しを持たせた。

  【中学校】 平成20年11月10日(月)
 第3学年 数学「関数 y=ax」 池谷雅道

 具体的な事象を調べることを通して、関係を見いだし、表現し、考察する能力を伸ばすことができるようにする学習である。検証授業では単元の後半で、関数の座標を用いて、求積問題を解決し習熟する内容である。筋道を立てて考える力を高めるための手立てとして特に、「活用しやすいノートづくり」を取り入れた。既習事項を意識して、本時の学習の理解が高められるようなノートの取り方を継続して取り組んだ。 

4.検証授業の概要
3.研究仮説

 児童生徒の思考力を高めるためにはどのような学習指導が有効なのか、授業実践を通して明らかにする。

 (1)表現力とともに高める思考力
 思考力と表現力は両輪的な関係があることが、研究を通してわかった。今後、表現力にも着目して研究を進めていくことが必要である。

 (2)思考力育成を支える基礎学力の定着
 ノートの取り方や問いを生かした授業をしても解決に至らなかった子どもがいた。基礎学力の定着を図ることも本研究の基盤となるであろう。

(1)学習過程の場面ごとに「めざす子どもの姿」をはっきりさせた。
 理論研修や教材研究を通して、問題解決的な学習過程の場面ごとに、子どもの思考の流れを想定し「高めたい思考力」と「めざす子どもの姿」を設定することができた。

(2)思考の流れに沿った手立てにより、筋道を立てて考える力を高めた。
 学習過程の場面ごとに設定した「めざす子どもの姿」の実現に向けた手だては、子どもの「筋道を立てて考える力」を高めることに有効である。授業実践の中では、「問いを生かした授業展開」が、課題解決の見通しを持つことに役立ち「活用しやすいノートづくり」は、既習事項を意識して考えることにつながった。

 一つの手だてだけでなく、思考の流れに沿って取り入れたいくつかの手だてを継続していくことが、思考力を高めていくと認識した。

 問題解決的な学習過程のそれぞれの場面で、めざす子どもの姿をはっきりさせ、その実現に向けての手立てを工夫すれば、子どもの「筋道を立てて考える力」を高めることができるであろう。

2.研究目標