調査研究部


より好ましい生活を確立するために

    〜安房の子どもの規範意識と行動を探る〜



1 主題設定について

 現代社会において、児童生徒の学校・社会における規範意識や社会性の低下が深刻な問題となってきており,安房地域においても、けっして例外であるとはいえない。
 そこで、本研究所では、昨年度より安房地域における子どもの規範意識に焦点を当てて研究を進めてきた。昨年度の調査から、規範意識を高める手だてとして、より良い生活習慣を身につけること、より良い人間関係を築くことの重要性が明らかになった。
 本年度は、「安房の子どもの規範意識と行動を探る」ことを研究主題とした。調査範囲を小4〜中3に広げ、規範意識と行動の関係を生活経験との関係から調査・分析することにより、その現状と課題をつかみ、提言ができると考えた。



2 研究のねらい


 安房の子どもの「規範意識」と「行動」の現状と形成要因を調査することにより、課題を明らかにするとともに、今後の指導のあり方について考察する。



3 調査の内容と方法

(1)調査対象、回答数
 安房の子ども1,435名(内訳 小学校4年221名、5年生205名、6年生215名、中学1年生263名、中学2年生266名、中学3年生265名)を調査し、このうち3分の1を抽出して、分析を行った。

(2)主な調査内容
 安房の子どもの規範意識と行動、家庭・学校・地域での生活の様子、自分自身の様子、規範意識に関する場面テスト等

(3)調査方法
 無記名質問紙法
 平成20年9月中旬〜10月上旬



4 調査結果の分析と考察


 クロス集計とX^2検定を行い、相関関係を分析した。その結果以下のことが明らかになった。

(1)子どもの規範意識と行動の実態
 安房の子どもたちの規範意識は高い傾向にある。しかし、意識と行動には差が見られ、頭でわかっていても、なかなか行動に移すことのできない子どもがいることがわかった。
 意識・行動の両方とも、小4から小5、小6から中1、中2から中3の学年間で、低下する傾向が見られた。特に小6から中1にかけては、下がり方が他の学年間より激しく、意識においては、全ての項目において10%程度の差が見られた。

(2)規範意識と行動の形成要因
 子どもたちが目標や夢を持つこと、勉強がわかること、家庭・学校・地域それぞれの集団の中で役割を認められることが規範意識を高める要因である。また、周りの大人が褒めると、行動力を伸ばすことができ、悪いことをしたときにしっかり叱ると、規範意識を高めることができる。悪いことは叱り、良いことを褒めることで、規範意識と行動の伴った子が育つ。

(3)学年に応じた手だて
 規範意識と行動の調査により、学年間で差の大きかった小4から小5、小6から中1、中2から中3の子について生活経験から分析したところ、規範意識を高めるためには、周りの大人が子どもの気持ちを理解することが大切であることがわかった。また、しつけは、大人の影響力の大きい小学校までに確立する必要があること、中学生には、本人だけでなく、影響力の大きくなってくる上級生や友達にも、一緒に指導していくことが大切であることがわかった。



5 研究のまとめ


 今回の調査研究により、規範意識が高く、行動力もある子どもを育てるためには、周りの大人からの影響が大きいことがわかった。
 そこで、家庭・学校・地域へ、以下のような提言を行う。

〈家庭への提言〉・・・コミュニケーションを密にし、自分に自信の持てる子どもを育てよう。

            ○子どもとの会話、コミュニケーションを大切にし、子ども理解に努めましょう。
            ○子どもに大切な家族の一員として、責任と役割を持たせましょう。
            ○小学生の時期までに、基本的な生活習慣をしっかり身につけさせましょう。
            ○たくさん褒め、必要なときにはしっかり叱りましょう。


〈学校への提言〉・・・人間関係づくり・学習指導を充実させ、自己満足感を持てる子どもを育てよう。

            ○教員は、一人一人の子どもと話をし、児童・生徒理解に努めましょう。
            ○クラスの中で、一人一役など、全員が活躍できる場を設けましょう。
            ○子ども達が、「勉強がわかる」といえるような学習支援をしましょう。
            ○中学校では、その子だけでなく、友だち、上級生の心も育てる指導を心がけましょう。


〈地域への提言〉・・・地域と子どもの結びつきを強め、「おらが町の子」を育てよう。

            ○挨拶、声かけ、行事の参加への呼びかけ等、子どもへの積極的な働きかけにより、地域を好きな子どもを育てましょう。