昨年度から引き続いて「思考力を高めること」について取り組んだ。思考力と表現力は両輪であるとおさえられていたが、「思考力を高めること」を目ざす上で表現力は、思考過程を整理するために欠くことができないと考えた。そこで、「書く」「話す・聞く」をキーワードとして、子どもの思考力を高めるためにはどのような学習指導が有効なのか。小学校と中学校の授業実践を通して明らかにしていった。
特に、学習過程の中で、「追究する」場面と「磨き合う」場面の高めたい思考力とめざす子どもの姿は以下の通りである。
(1)「追究する」場面
@高めたい思考力:「理由づけしていく力」
Aめざす子どもの姿
・考えの根拠となる情報を読み取ることができる。
・理由や根拠をはっきりさせて自分の考えを書く。
・他の方法や視点がないか考えようとする。
(2)「磨き合う」場面
@高めたい力:「考えを広げたり深めたりする力」
Aめざす子どもの姿
・自分の考えを自分の言葉で話す。
・自分の考えを他の人と比べることができる。
・自分の考えを必要に応じて再構築することができる。
児童生徒の思考力を高めるためにはどのような学習指導が有効なのか、授業実践を通して明らかにする。
【仮説1】
追究する場面において、理由や根拠をはっきりさせて書く活動を工夫していけば、子どもの思考力を高めることができるであろう。
【仮説2】
磨き合う場面において、友だちの考えと関連させて自分の考えを深める話し合い活動を工夫していけば、子どもの思考力を高めることができるであろう。
【小学校】 平成21年11月2日(月)
4学年 国語「すじ道を立てて考えよう アーチ橋の仕組み 実験したことをもとに」
授業者 東条小学校 佐粧光一
○授業の概要
検証授業は、アーチ橋の作り方について、本文の要点をまとめ、接続語を使って、説明できるようにする学習であった。
仮説1の書く活動の工夫として、ノート指導、段階を踏んだ根拠を書く活動、本時を活かした記録分の作成。仮説2の話し合い活動の工夫として、話し合うテーマと場面設定の工夫、話し合いの形態、資料を活用した話し合い活動をして、子どもの思考力を高めていった。
【中学校】
3学年 社会 公民「国際社会での日本の役割」
授業者 鴨川中学校 渡邊泰彦
○授業の概要
検証授業は、先進国と開発途上国の間の差から、日本はどうすればよいか、自分の考えを持つ学習であった。
仮説1の書く活動の工夫として、ワークシートの活用、理由や根拠を引き出す資料の提示。仮説2の話し合い活動の工夫として、接続語を意識した話し合い、話し合う形態の工夫、生徒の意見や立場を視覚的に示す工夫をした。
(1) 仮説1について
@ 成果
書く活動の工夫として、ノート指導の工夫、ワークシートの活用、学んだことを生かした作文活動は、子どもの思考力を高める上で有効である。
A 課題
書く活動をきめ細かく継続的に実施することで書き方が定着し、さらに子どもの思考力を高めることができる。
(2) 仮説2について
@ 成果
話し合い活動の工夫として、接続語を意識した話し合い、多様な学習形態、資料を活用した話し合い、話し合うテーマと場面設定の工夫、板書の工 夫は、子どもの思考力を高める上で有効である。
A課題
子どもが意欲的に話し合い、思考を深めるために、話し合いの組織化を工夫する必要がある。