調査研究部


より好ましい生活を確立するために

    〜小中の接続をなめらかにするための有効な手立てを探る〜



1 主題設定について


 昨年度の研究から、安房地方の児童生徒は、「規範意識は高いが、意識と実際の行動との差が見られる」という傾向がどの学年にもあることが明らかになった。特に、小6から中1にかけては、差が他の学年間よりも大きく、ほとんどの項目において10%以上の差が見られた。
 小学校から中学校への子どもたちの不安を解消し、接続をなめらかにすることが、よりより好ましい生活の確立への一つの手立てになると考えた。
 さらに、この調査結果の背景を明らかにし、より好ましい生活を確立させるためには、小6から中1にかけての変容や、さまざまな面から調査分析を進める必要があるという研究の方向性が示された。
 昨年度の研究の追跡調査及び本年度の研究より、児童生徒と教員の意識調査をもとに分析・考察を行いたいと考え、本研究主題を設定した。



2 研究のねらい


小中の接続をなめらかにするための有効な手立てを調査し、課題を明らかにするとともに、今後の指導のあり方について考察し提言する。



3 調査の内容と方法


(1)調査対象、回答数

 南房総市、館山市、鴨川市、鋸南町の小学校6年生、中学1年生及び教員(抽出校)、小学校6年生児童558名、中学1年生生徒993名、小学校教員236名、中学校教員242名

(2)主な調査内容
 @ 児童生徒
    接続段階の期待や不安、生活体験、自分自身に関すること等、接続段階の教員や保護者の願いに関すること等
 A 教員
    児童生徒とのかかわり、接続段階の児童の期待や不安のとらえと解消への手立てに関すること等
(3)調査方法・調査期間
 無記名質問紙法、平成21年9月上旬実施



4 調査結果の分析と考察


(1)子どもの実態
 中学校入学を控えた子どもは、不安と期待が入り混じっている。どちらかと言えば、むしろ楽しみにしていることが多い。それは新しい友達・先生・先輩など、人とのかかわりである。環境が変わると共に新たな人間関係に対する期待が高まるからと言える。

(2)小学校教員と中学校教員の実態
 小中の接続をなめらかにするための意識した取り組みについて調べた。特に小学校教員の方が交流は十分ではないと感じている。
 教員は学校の授業だけで学力が向上するとは考えていない。そのため「基本的な生活習慣」や「家庭学習の習慣」等の確立を家庭に強く望んでいることから、家庭との連携を要望していくことも必要であると感じている。

(3)子どもと教員の比較
 全調査項目において子どもよりも教員側の方が「子どもは不安である。」と感じている。教員は今までの経験から、子どもの入学に際してのさまざまな変化についてある程度推測できるが、子ども達は切実にとらえていないことがこの差につながっていると考えられる。

(4)追跡調査から
 中学校で勉強をがんばったり、ほめられたり、クラスで認められたいという生徒が多い反面、リーダーとして資質のある生徒が、積極的に出てこなくなる傾向が見られる。この理由として他の小学校からのリーダーもおり、自らどの程度リーダーとしての資質があるか考えるようになるためと思われる。



5 研究のまとめ


 今回の調査研究により、小中の接続をなめらかにしていくためには、入学前後の子ども達の実態を把握するとともに、各学校間の情報交換や交流を十分に行い、子ども達や家庭にも発信していくことが大切であることがわかった。
 そこで、子ども達・家庭・学校へ、以下のような提言を行う。


(1)子ども達への提言・・・学習や生活の変化をうまくのりこえよう。
  @学習習慣、規則正しい生活習慣を身につけましょう。
  A小学校から中学校への変化を前向きにとらえ、がんばりましょう。
  B小学校と中学校の先生は皆さんのことを温かく見守っています。心配事があれば進んで相談しましょう。

(2)家庭への提言・・・・・・子どもとのコミュニケーションを密にしよう。
  @子どもとの会話やふれあいを大切にし、子ども理解に努めましょう。
  A小学校の時期までに、学習習慣や規則正しい生活習慣を身につけさせましょう。

(3)学校への提言・・・・・・学習指導・人間関係づくりを充実させよう。
  @一人一人の子どもとのコミュニケーションを大切にし、児童生徒理解に努めましょう。
  A子ども達が、勉強がわかるといえるような学習支援をしましょう。
  B学習の基礎を着実に身につけさせましょう。
  C小中学校の情報交換、交流を積極的に進めていきましょう。