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安房教育研究所の所員が、日頃の読書の中から特に心に残った本を紹介しています。
興味をもたれた方は、ためしに読んでみてはいかがでしょうか。

書名 著者
出版社
一言
「読み聞かせ・読み語り」で
こころの通い合い

平川政男
学事出版株式会社
 この本は、元三芳村(現・南房総市)三芳小学校校長の平川政男先生の書かれた本である。三芳小学校での実践と現在の活動から、読み聞かせ(読み語り)のねうちについて書かれている。平川先生は、読み聞かせを通して、こころが通い合うという事、中でも学級担任の行う読み聞かせが、教師と子ども、子どもと子どものこころを強く結びつけ、学級集団づくりの大きな力になると述べている。
 読み聞かせは、子ども達にとってたくさんの魅力を持っている。しかし、読み聞かせの魅力はそれだけのものではなく、読み手である教師にとっても、大変ねうちのあるものだということがこの本からわかる、読み聞かせで、子ども達の心に「先生の読んでくれた○○の絵本」としての記憶が残るだけでなく、読み手の愛情を感じ、教師への信頼感が育まれるというものである。
 私も学級担任として、これまでに読み聞かせをしてきた経験から、児童に対する読み聞かせの効果については認識していた。しかし、この本を通して、教師と子ども達を強く結びつける大きな力となり得る読み聞かせの魅力について、再認識させられた。
数学の学び方・教え方
遠山 啓
岩波新書
 この本は、1972年に第1刷が発行された本である。数学教育の歴史と著者が勧める指導法の解説である。量、数、集合と論理、空間と図形、変数と関数の各話題について、どのように指導していくかという話が書かれている。また、内包量や外延量、分数の意味、文字の意味など基本的概念についても詳しく述べられている。例えば3ケタのたし算はどういう順番で教えるのがよいのかも具体的に書かれている。また、分数の加減乗除の問題の解法はわかるが、なぜ通分してから加減乗除をしてよいのか、あるいは、分数の除算の場合は、なぜ逆数をかければよいのか。おそらく計算はできてもこれらの問題点について答えられない場合があると思われる。これについても丁寧に説明してある。中学校1年生に「正の数・負の数」の単元で、逆数の意味や四則演算を教える際に役立つ本であった。
「教師大村はま96歳の仕事
大村はま
小学館
  この本は、52年間高等学校・新制中学校で国語教師をされた大村はま先生が書かれた本である。この本には、大村先生の考える“教師の仕事”が書かれている。その中でも、何度となく出てくる「教えること」と「教えないこと」という言葉。大村先生は、「今の教師は教えなくなった。」と言う。例えば、音読の仕方、話し合いの仕方。ただ「読んでみなさい」と言うのではなく、どこをどんなふうに読んだらいいのか。「話し合ってごらん」ではなく、どういう風に話し合ったら話し合いの力がつくのか・・・。子どもが困ったときには、教師が手本を見せる。そして教師は、子どもに力をつけなければいけない。どうしたら力がつくのか、それをしっかり押さえ指導しなくてはいけないと言う。
 この本を読み、教師という仕事の重さを改めて感じさせられた。どうしたら、どう言ったら子ども達の力が伸びるのか。当たり前のことなのだた難しい。教師になって5年が経ったが、まさに自分は、大村先生の言う“教えない教師”ではなかったかと反省する。ちょうど夏休み。2学期から教師として仕事をすべく、今一度自分を振り返ってみようと思う。
数学的な考え方を育てる
実践アイデア集

福永 敬
明治図書
  普段あまり読書をしない私だが、研究所で学び始めてから読書の必要性を強く感じ、本を読むようになった。最近は数学教育に関する本を読んでいる。この本は、その中の1冊である。「数学的な考え方」について、実践と結びつけて、数学的な考え方がどのように出現したり、働いたり、できあがったりしているのかが書かれている。2学期以降の授業にすぐに役立ちそうなエキスのつまった本であった。
「給食ばんざい
湯気のむこうに笑顔がいっぱい

菅 淳子
新制出版
 温かみのある題名にひかれ、この本を手にした。今、学校でも食育の重要性が叫ばれている。朝食抜きの子どもが多いこと、生活時間にゆとりがなく短時間で食べる子の多いこと、偏食の多いこと、食に関する問題点は数多くある。著者である菅さんは、26年もの間小学校の給食を作り続けた。給食の大切さを伝えなけらば・・・と料理の技術、食品の使い分け、メニューの幅広さ、食事のマナーなど家庭の食事の見本となるように工夫してきた。例えば、ひなまつりや七夕、クリスマスの季節にあった献立。パスタ、ポトフ、チャーハン、ちらし寿司のようないろいろな国の料理。スープ・汁物は具だくさんにして栄養のバランスをとること。それに加えて食缶を開けたときの子どもの顔を思い描き、きれいに切り口を並べる。そんな心遣いが子どもにも伝わり、給食当番が「○年○組 給食いただきます」「ごちそうさまでした」と言いながら配膳室に来るのだろう。「食」を通して大人が子どもに教えられることもたくさんある。「食べること」は身も心もゆったりとさせ、次の活力につなげる大切なもの。人と人とのつながりを作る「食」の大切さを私も伝えていきたい。
感動ある中学校づくり
千葉県三芳村立
三芳中学校編
  この本は、昭和63年度(実際にはそれ以前からであろう)に行われた三芳中学校での実践を掲載したものである。「約20年前の実践か」と手にしたときには思ったが、読み進めていくうちに「生徒がこんなに生き生きしている学校は今まで聞いたことがない。今すぐにでも実践できることはないだろうか。」とその実践のすばらしさに感動した。
 「リーダーは力(考える)・キ(記録する)・ク(工夫する)・ケ(計画する)・コ(行動する)で勝負する」「めあてを生徒のものに」など指導のポイントが細かく書かれており、この本を読んで今までの自分の実践を考え直した。改めて「生徒が感動する学校」を目指して、日々の活動に取り組んでいきたいと思った。
成長の法則
ジェフ・ケラー
株式会社ディスカバー
・トゥエンティーワン
  この本は、成長するための50のアドバイスが短い言葉で書かれている。「目標を設定する」「目標をひたむきに追い求める」というアドバイスを見たとき「やはりそうか」と思う反面、「自分の目標はなんだろう」「子ども達は、今、何の目標があるのだろう」とその大切さを改めて感じた。
 学校ではちょうど運動会が終わり、自分にとっても、子ども達のも新たな目標設定が必要だと感じる。「短期的な目標」「長期的な目標」「いつまでに達成させるか」よく考えたいと思う。
使える算数的表現法が育つ授業
田中 博史
東洋館出版社
  この本の著者の田中博史先生は、現在筑波大学付属小の現役の教諭である。この本は「算数的表現力を育てる授業」の続編にあたる。
 私は一昨年、この本と出会った。読みを進めていくうちに、児童との対話の重要性や児童の自然な語りはじめの言葉、何よりもm自分の考えを聞いてもらいたいという素直な気持ちを持てるように導くことが重要なのだと感じた。私は、始めのうち、付属小だからできるのだろうと思っていた。しかし、この本に書かれていることを真似てみた。授業後、児童が「算数たのしかった。」と満面の笑みで語ったのである。学ぶべきことを教える・方法を身に付けさせるという指導だけでは、この「たのしかった」という言葉は生まれなかったのではないかと思った。これからも、児童の心からの言葉に耳を傾けていきたいと思う。
みんなが分かる!
できる人の教え方
安河内 哲也
中経出版
  著者は東進ハイスクールで20年以上英語の指導をしてきた人気講師。たとえば、相手のやる気を高める方法として@学ぶことへの「快」の感情をつくり出す。A「どう役に立つのか」というところまで教える。Bどんな部下・生徒・子どもでもとりあえず期待してみる。ということなどが7点挙げられている。このうちBは、できそうでなかなかできない。それは、子どもと接する時間が長くなればなるほと状況が分かってきてしまうもので余計に。自分では分かっているつもりでもできないことや、子どもに指導する時に必要なことを改めて考えさせられた。
いまどき中学生白書
魚住 絹代
講談社
 メディア(携帯電話でのメール・ゲーム・ネット)中毒が,中学生の心と体にどのような影響を与えるかを,この本は書いている。実際,現在の中学生のほぼ全員が携帯電話を持っており,大多数がゲームやネットを経験している。特に女子は,携帯でのメールのやり取りにだいぶ時間をかけているようで,保護者からも三者面談などで「どうしたらいいのか」などと相談を受けることが多くなってきた。メディア中毒が原因の一つとなり,自傷行為や反社会的行動が引き起こされている。このような症状を抱える子どものの多くは,小さい頃の保護者とのコミュニケーションや愛情不足が見られる。だからといって,家庭だけで問題を解決することは到底できない。「学校と家庭が大きなコンセンスを共有して,共同歩調を取っていくことが必要不可欠である」と筆者は語っている。メディアとうまく共存していく姿勢を取らなければ,子どもたちは勿論,大人でも中毒になる恐れがある。ただの知識を教え込むのではなく,いかに利用し,知恵としていくかを教えなければならないと感じた。
「感じない子ども 
こころを扱えない大人」
袰岩 奈々
集英社新書
 著者が学生や働く女性などのカウンセリングや教育関係者を対象とした研修を数多く実施している心理カウンセラーである。「先生,私,みんなから嫌われているのかな?」と子どもから言われたとき,「どうしてそう思うの?」と多くの教師は聞いてしまう。「どうして?」という何気ない一言が意外にも圧迫感を与え,相手の素直な気持ちを引き出せなくなるそうだ。子どもたちの発するSOSにどう答えるか,感情や気持ちに気づくこと,そしてそれを認めていくことの大切さが書かれている。