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安房教育研究所の所員が、日頃の読書の中から特に心に残った本を紹介しています。
興味をもたれた方は、ためしに読んでみてはいかがでしょうか。

書名 著者
出版社
一言
全人教育論 小原國芳(著)
玉川大学出版部
 私の卒業した玉川学園(大学)の創立者として,「全人教育」で有名である小原國芳先生は,多くの「大きな夢」を現実に表現してきた方である。全人教育で,人間文化には,学問,道徳,芸術,宗教,身体,生活の6方面があると小原國芳氏は説いている。学問の理想は真であり,道徳の理想は善であり,芸術の理想は美であり,宗教の理想は聖であり,身体の理想は健であり,生活の理想は富である。教育の内容には,人間文化の全部を盛らなければならない。故に,教育は「全人教育」でなければならない。全人教育とは,完全人格すなわち調和ある人格を育むことにある。
 そこで私も,今も私の心に残っている玉川学園のモットーを紹介したい。「人生のもっとも苦しい,いやな,辛い,損な場面を真っ先に笑顔をもって担当せよ。」今現在,私がこのように過ごしているか疑問もあるが,この言葉をいつも忘れずに,これからもがんばっていきたい。
田村 裕(著)
ワニブックス
中学生の自分の子どもを,家も保護もなく放り出してしまう親が,現実にいることに非常に驚いた。憤りを感じた。しかし,中学生の主人公はやけになることなく,兄,姉や周囲の人に助けられながら,貧しさを乗り越え,前向きに生きていく。現代の子どもにこの強さを教えたい。
村の5年生 
農村社会科の実践

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江口武正(著)
国土社
「子どもが自ら学び、自ら考える授業」を行うことで、「生きる力」を育んでいきたいと思い指導に当たっている。しかし、知識習得型の社会科学習となってしまうことに悩みをかんじていた。そんな時、先輩から勧められたのが本書である。
 本書の舞台は、昭和20年代の新潟県の農村である。そこで著者と子どもたちは、当時の農村が直面していた耕地整理をめぐる問題や封建的な人々の意識や生活について考え、それに働きかけていく。本書は、その授業実践の記録である。
時代は変わり、本書にあるような村の様子はほとんど見られなくなったといってよい。しかし、著者が育てようとしていた「自分の頭でものを考え、みんなで力を合わせて現実を一歩一歩改善していこうとする子ども、いわゆる実践力の強い子ども」は
、現在も普遍の姿であるように思う。
西の魔女が死んだ
梨木香歩(著)
新潮社
話の始まりは、ある日自分でもわからず登校できなくなった中学生の少女「まい」が、田舎のおばあさんの家へしばらく預けられることになり、おばあさんの下で魔女修行を始めることになる、という展開である。おばあさんの知恵や草花の効用といった機微もさることながら、思春期の少女の心理の揺れ動きが、豊かな自然描写の中で、丁寧に表現されている。おばあさんが全身全霊であたたかく「まい」を受け止める姿が、人の愛情を感じさせる作品である。今夏映画化され、DVDも発売されている。
小学校英語教育
の進め方

岡 英雄・金森 強
成美堂
 「本当に,2001年度から英語活動が始まるのですか?」他教科の教材研究に追われる日々の中,英語活動という新たな分野を学んでいくことは,本当に気が重いことです。
 この本は,「なぜ,小学校英語教育を行うとよいか」という理論から,諸外国の初等教育における外国語活動の実践,英語の授業の実際の活動までを,1冊の本に凝縮して書いています。理論について,かなりページを割いていますが,ひとつのトピックについては短く書かれており,比較的,読みやすい1冊でした。英語の授業が本格的に始まる前に,自分の「ひきだし」をふやしてくれた1冊でした。
親の品格
板東 眞理子
PHP文庫
 2007年のベストセラー『女性の品格』の続編である。少子化・核家族化・共働きで難しくなった親子関係のあり方が,66の例を挙げて具体的に書いてある。例えば「泣く子に負けない」「みんなで食事をする」「手伝いをさせる」「親子で自然を楽しむ」「正しい日本語を使う」「親はごまかさない」などが書かれている。親の立場として読むと「ハッ!!」とさせられることがある。一人前の教師に成長することが大切だと思うと同時に,「親」として成長することも大切だと思う。
灯し続けることば


大村 はま
小学館
 この本は,3年前に99歳でなくなった生涯一教師を貫いた著者が,いろいろな場,いろいろな機会の時に話をしたり書いたりしてきたことの中から,それぞれの言葉を拾い,まとめてある「珠玉の言葉集」といえる。子どもにかかわる,全ての大人に向けてとあり,読むとはっとさせられる言葉ばかりである。
 例えば,『子どもに向かって「忙しい」は禁句です』や,『伸びようという気持ちを持たない人は,子どもと無縁の人です』『今日だけ教えているのではないのですから』など。それぞれの言葉に説明がある。いつ読んでも,考えさせられる本である。
人を助ける仕事
「生きがい」を見つめた37人の記録

江川 紹子
小学館文庫
 この本では、37人の職業に対する情熱と経験が紹介されている。それぞれ「人を助ける仕事」をしている。例えば、NGO職員、義肢装具士、消防救助隊員、法務教官、音楽療法士など、さまざまな職業についている人の体験談が載っている。つらく、苦労している経験と、その職業について得られた喜び、その職業に対する熱い思いがつづられている。それらの人々の人生と生きがいが伝わってくる。キャリア教育の必要性が叫ばれた社会背景を考えると、人々の生きがいにふれる価値は大きいと考える。ぜひ子どもたちにも紹介したい本である。
知性の織りなす
数学美
定理づくりの実況中継

秋山 仁
中公新書
 数学の研修で,この本に紹介されている『一刀切り定理』について取り組んだ。数学の定理ということで,難しそうな¨がならんだ方程式などを」思い浮かべたのだが,この本は身の回りのものから見つけられる定理をわかりやすく解説している。平面を敷きつめるタイル張りや,ケーキの中身も含めた均等分割など,生徒たちが興味を持って取り組める内容なので,授業で活用している。また,しっかり整理され,わかりやすくまとめられた解説は,数学担当としても参考になるものであった。

教育とわが生涯

小原 國芳
南日本新聞社編
(玉川大学出版部)
 この本は私が卒業した大学の創立者である小原國芳先生の自伝である。現在の経済状況から比較した場合、小原先生のような波乱の人生を送ることはとても考えられないが、その中から生涯を教育に捧げた活力は大変すばらしいことである。全人教育ということばはこの小原先生が考え出されたものであるが、私なりに全人教
育とは全てに調和の取れた教育と捉えている。偏りがなくすべてのものを学習した上で個性ある人間形成が大切であると考えさせられる本である。 教師となって18年余り経った。まだまだ力不足の私であることは言うまでもない。いつも迷い、苦労し、落ち込むときがある。そんなときにこの本を改めて読むことがある。何度読んでも不思議と元気づけられる1冊である。